もう20年近く前ですが、美容師を採り上げたテレビの人気番組がありました。
「カリスマ美容師」という言葉も流行し、美容師という職業が一躍花形として注目を浴びました。
それから時は流れ、現代では美容師不足がサロン経営者を嘆かせています。なぜこんな状況になってしまったのか、解決策はあるか、検証してみました。
かつてトレンドの花形職業だった美容師は今
世の中に「カリスマ美容師」という言葉を普及させ、美容師を花形職業に押し上げたテレビ番組がありました。1999年から2000年にかけて放映されていた深夜番組「シザーズリーグ」です。
番組内でヘアスタイリングの対決を行うもので、ここで人気の出た美容師は「カリスマ美容師」として有名になり、美容師ブームに火を付けました。その影響で、高校生の間では将来なりたい職業として美容師が上位ランクされるようになりました。
全国でオシャレな美容院、ヘアサロンが次々と開店し、業界の様相もずいぶん変わったと見られていました。
しかし、今の美容業界では美容師不足が深刻化しているのです。
同業者同士が顔を合わせると「どこかにいい人いない?」という会話が好例となっています。
人手不足、人材不足はついに美容業界にまで押し寄せてきました。「手に職」の代表的な職業である美容師。国家試験に合格し、サロンで修業を積んで開業すれば、一生食べるのに困らないはずなのに、なぜなのでしょう。
複雑な要素が絡み合っている美容師不足の5つの原因
美容師不足をきたしている原因は、いくつかあります。
他の業界と同様の理由以外に、美容業界ならではの原因が挙げられています。
原因1:長時間労働、低賃金
拘束時間が長い割りには給与額が低いという、他の業界でもポピュラーな原因が、まず挙げられます。
特に新人の見習い時代には、誰よりも早く出勤して清掃、器具揃えなどをしなければなりません。しかも一日を通じてずっと立ちっぱなし。閉店後も後片付けや翌日の準備など、やらなければならない仕事が待っています。そしてその割りには給与水準が低いのです。
厚生労働省の平成26年度賃金構造基本統計調査によると、美容師及び理容師の平均年収は30.2歳で約262万円。これではいくら将来独立できると言っても、忍耐力が限界を迎える人も多いでしょう。
スタイリストの待遇の実態
平均年齢 | 30.2歳 |
勤続年数 | 5.8年 |
労働時間 | 174時間/月 |
超過労働 | 11時間/月 |
月額給与 | 214,700円 |
年間賞与 | 51,000円 |
平均年収 | 2,627,400円 |
上記はアシスタントではなく一人前のスタイリストになった人のケースです。
アシスタントでは10万円切る、という証言もあります。
原因2:責任の重さ
お客さんは美容室に「キレイになりに」行きます。お客さんの思い通りのヘアスタイルにしたつもりでも、しばしばそうは思っていただけない結果になる場合もあります。
「どうしてこんな変なヘアスタイル②下の!?」「あなた、センスが悪いんじゃない?」などと、面と向かってのクレームを受けることも多いでしょう。
こうなったら担当を変えさせられるか、もうサロンに足を運んでくれなくなります。こんなことが続けば経営者としては、店の足を引っぱるスタッフという評価を下さざるを得ません。
自分の仕事が売上に悪影響を与えるという責任を負っての毎日。プレッシャーは大きいものがあります。
原因3:手の荒れが酷くなる
アシスタントは一日中、薬剤とシャンプー剤に触れています。
いくら皮膚が丈夫な人でも、手の荒れが酷くなり、ボロボロになってしまいます。しかも、立ちっぱなしの仕事ですから足のむくみや痛みも現れます。
女性の多い職業ですから、ガサガサの手になってしまうというのは大きなマイナス点です。
原因4:一人前になるまでに年数がかかる
美容師というのは、言ってみれば人を美しく・可愛くする「職人」です。従って、一人前になるためにはある程度の年数が必要です。「手に職」を付けるには一朝一夕というわけには行きません。
下記に、美容アシスタントがスタイリストとしてデビューするまでの段階ごとの年数を羅列してみました。
- 1年目 前半 … 接客、シャンプー、マッサージ、トリートメント、カラー塗布
- 1年目 後半 … カラー応用、縮毛矯正、ブロー・スタイリング
- 2年目 前半 … パーマ基本、特殊パーマ、ヘアセット
- 2年目 後半 … カットの基本、着付け、メイク
- 3年目 … カット応用(ショート・ミディアム・ロング)(出典:スタイリストデビューまで何年?100店舗調査!|美容師/美容室の求人・転職【ビューティーキャリア】)
各ステップごとに技術テストがあり、すべてに合格してはじめてスタイリストとしてデビューできるのです。
最短でも3年でやっと一人前の美容師として認められます。
サロンによっては上がつかえているためカットデビューできるのは10年目というケースもあります。10年間修業しているのですから腕は確かなのでしょうが、その間は給与も低いままですし、それまで耐えられるかどうかにかかってきます。
原因5:美容業界の構造的理由
4までのような労働環境による理由の他、美容業界の構造的な問題も美容師不足に影を落としています。それは、美容院・サロンの供給過多。
グラフからもおわかりの通り、減少傾向にある理容室と比べ、美容院は増加しています。これは、低価格サロンや小規模サロン、人気サロンの多店舗化などにより、廃業数よりも開業数が上回っているためです。
つまり、需要を供給が上回っていると言っていいでしょう。サロン数の増加に美容師数が追いつかないのです。
不足しているなら職を求めて美容師志望者が流入すれば解決するのですが、そこには「美容師国家資格免許」という高い壁があります。
他の職業のように、気軽に転職してくるわけにはいかないのです。加えて、上記に挙げたような長時間労働・低賃金という悪条件が重なります。
業界の構造を変えない限り、人手不足の解決は遠いと言えましょう。
あなたのサロンが求める美容師に選んでもらうための決定打とは
人手不足を解消するためには、労働環境を改善してもっと体力的負担を軽減する施策や、給与アップを行えば、ある程度の成果は見られるものです。
しかし美容業界の構造的問題により、そのような単純施策にも限界があります。
国家資格免許を撤廃して構造改革すべしという意見もあります。美容師の免許は既得権益であるので、規制緩和しなければ参入障壁はなくならないという主張です。もっともではありますが、すぐに免許制度が撤廃されるとは考えにくいのです。
さらに、地方都市では上昇志向の強い若い美容師さんが首都圏へ出ていってしまうケースも多く見られます。残っているのは、「何となく地元がいいから」という非常に弱い動機の美容師しかいない、という状況です。
仮にあなたのサロンが地方都市にあり、意識の高い美容師に来てほしいと願っている場合、どのような求人方法を採るでしょうか。あるいは、採っているでしょうか。
- サロンの外に「美容師募集」「スタッフ求む」という張り紙をしますか?手っ取り早くておカネもかかりませんが、張り紙を見てくれる美容師さんの数は悲しいぐらいに少ないです。
- 横のつながりを利用して、「いい人がいたら紹介して」と頼むのもよいかもしれませんが、本当にいい人材がいたら、競合であるサロンにわざわざ紹介するでしょうか。自分のサロンで確保してしまうというのが普通です。
- お客としていろいろなサロンに出かけていき、そこで目についたスタッフをスカウトするという方法も考えられます。自分自身でカット技術や接客術を確かめられるメリットはありますが、効率が悪すぎます。
おカネをかけて求人広告を出稿する方法はポピュラーです。
あなたのサロンでも今まで求人広告誌に何度も出稿してきたことでしょう。その結果はどうでしたか? うまく行かなかったからスタッフ不足に悩んでいるのではありませんか。
今の求人市場は非常に競合が多いため、求人媒体に広告を載せているやり方だけでは思ったような成果は出せません。
求人の費用対効果を高めるには、他のサロンと異なる方法で求人活動を行わなければいけません。
今までのやり方ではなく、新しいやり方にトライするには、抵抗があるかもしれませんが、現状の問題を解決するにはそれしか方法がないというのが実情です。
詳しく知りたい方は以下で紹介している書籍をご覧ください。