このサイトで以前、離職率の根本に迫ってみるという「離職率」についての記事を書きました。
この記事ではそれをもう少し掘り下げ、「新卒」の離職率にフォーカスしてみたいと思います。
新卒入社した社員が3年後にまだ在籍しているかどうかを調査したのが、「3年後離職率」です。
厚生労働省では毎年この調査を行っていて、最新のデータによると大卒の3年後離職率は32.3%となっています。
大卒3年後の「離職率」調査結果
出典:厚生労働省「学歴別卒業後3年以内離職率の推移」
グラフにもある通り、平成7年に30%を超えてからずっと20%台に下がることなく推移しています。
平成4年には23.7%でしたから、10%近く上がっていることになります。
1/3の新入社員が辞めてしまうって、冷静に考えるとかなり異常な事態のように感じるかもしれませんが、10年近く変わっていない事がグラフから見てとれます。
若者特有の離職理由を分析し、採用時の改善策を検討する
新卒社員が辞める時、どんな理由だったかに注目してみます。
もちろん、会社に言う「建前」と、言えない「本音」もありますが、後者の本音で調べてみたものが次のグラフです。
3年以内に辞めた新卒社員の離職理由ランキングTOP5
- 給料に不満(34.6%)
- 仕事上のストレスが大きい(31.7%)
- 会社の将来性・安定性に期待が持てない(28.3%)
- 労働時間が長い(26.9%)
- 仕事がきつい(21.7%)
となっています。
退職理由から現実の厳しさを知らない若者の特徴が垣間見える
新卒以外の一般の就業者が退職する理由の多くは「人間関係」による問題なため、納得できる面もあります。
詳しくはこちら退職理由ランキングTOP10「建前と本音」をお読みください。
しかし、新卒社員の場合、給料に不満、ストレスが大きい、労働時間が長いなど幼稚な理由がほとんど。
そんなの新入社員なんだから給料が安いのも仕事がきついのも当り前。「なんでそんな事で辞めてしまうの?」と首を傾げてしまう理由ばかり。
社会経験のない若者がいざ厳しい現実の世界に直面し、耐えきれなくなって辞めてしまう──といった問題がここで発生しています。
いくら勉強ができて素晴らしい学歴でも、ストレス耐性が低くすぐ辞めてしまうような人材は必要ないですよね。
ストレス耐性の強い学生を見抜くチェックポイント
正直、企業側からしてみたら、そんな若者は辞めてもらった方が良いとも言えますが、困るのは、そのようなストレス耐性が低く、メンタルが弱い学生を採用してしまった時です。
必ずありえないトラブルが発生します。
ですから、可能な限り優秀でストレス耐性の強い学生を採用したいと思いますよね。
では、どうすれば、ストレス耐性の強い学生を見抜けるのでしょう?
ポイント1:学生時代に熱中したことを訊き、その熱中度合いを確かめる
何かに熱中した経験がない学生は、失敗を恐れたり成長する意欲が低かったりします。
反対に、それについて熱心に語り、うまく行かなかったことも恐れず話し、その体験がどう役に立ったかまでを喋ってくれるような学生であれば、ストレスにも慣れていると判断できます。
ポイント2:一つのことに「なぜ?」と5回質問を繰り返す
「それはなぜ?」「それからどうした?」「もっと詳しく」など
1つの質問に対して何度も深堀りして質問することで、行動特性や再現性の力を確かめられるうえ、5回しっかり答えられることでストレス耐性を見ることもできます。
それだけの回数答えるのはかなりの労力でエネルギーを使いますから、質問回数を重ねるにつれ投げやりになったりいい加減になったりしたら、「この学生はちょっと……」ということになるわけです。
ポイント3:答えにくい質問を敢えてする
思ってもいなかった質問を投げかけることで、危機に瀕した時の精神状態を知ることができます。
例えば
- 「当社以外で行きたい会社は?」
- 「なぜ成績表でA(優)の数がこれだけなのか」
- 「嫌いな人を思いだし、どこが嫌いか教えて」
- 「浪人していたらその理由を教えて」
などなど。
答えの内容ではなく、思いがけない質問に対応できる力や、多角的な考え方ができるか、ポジティブな面を捉えられるかなど、思考習慣を確認できます。
ただし、「圧迫面接」になってしまわないよう注意してください。
これは面接官が意図的に意地悪な質問をしたり、横柄な態度を取ったりするもので、ストレス耐性を試す面接と言われています。
しかしやり過ぎは禁物。
ブラック企業に多い面接方法という評価もあり、匿名掲示板等に書かれることも多いのです。
ポイント4:過去の失敗経験を訊く
失敗は言うまでもなく精神にかかるストレスです。
失敗に対する経験値を知ることができ、どの程度の精神的負荷に耐えられるかを見抜けます。
「もうあんな失敗はしたくない。二度と耐えられない」という答えであれば、この先もストレスに対して弱いかもしれないということがわかります。
逆に、「あの失敗があったから今の自分がある」とポジティブに捉えているのなら、この学生はストレス耐性があるという判断ができます。
失敗の内容よりも、失敗に対してどのように感じたかを見きわめてください。(もちろん、どんな失敗かを知ることが、その学生の能力を判断する手がかりとなるのは言うまでもありません)
ポイント5:面接や筆記試験の態度でストレス耐性を判断する
答える内容以外に、答えていたり答案を書いたりしている時の姿勢や態度である程度判断することができます。
例えば
- 椅子にずれて座る
- 筆記試験でずっと肘をついている
- 答えている時に神経質な仕草をする
などです。
もちろん、それらのみで判断するわけではなくあくまでも参考にすることで、ストレス耐性の有無を見きわめてください。
このように、新卒入社後3年以内で辞められてしまう率を下げるためには、あらかじめ「辞めない社員」を採用しておくべきなのです。
新卒社員が直面する実社会の現実、仕事に対する不安、経済的な現実など、働き始めてみるとストレスを感じることの連続です。
上に挙げたようなポイントで面接を行い、ぜひ頑張って働き続けてくれる新卒の採用に結び付けてください。
とはいえ、求人の応募が得られなければ採用時に厳選できないといったお悩みがありましたら、以下で紹介している書籍をご覧になっていただくなどをして、求人活動を強化してみてはいかがでしょうか。