介護職の離職率が高いことは世間一般にも知られています。低賃金や重労働など、マイナス要素が重なっている結果です。しかし介護はこれからの日本にとって無くてはならない業種。嘆いてばかりいないで、離職率を上げるにはどうしたらいいか、その対策を探ってみましょう。
介護職の離職率が高い具体的な理由
まず、介護業界での離職率は本当に高いのか、それはどうしてなのかを見ていきます。
厚生労働省の「雇用動向調査」によれば、全産業における離職率と介護職員の離職率を比較すると平成25年とでは前者が16.6%、後者が15.6%とやや高くなっている程度です。
また、訪問介護員は常勤職員の離職率が高く、介護施設等では非常勤職員の離職率が高い傾向にあります
介護職員の離職理由
- 仕事の大変さの割に給料が安い・・・ (68%)
- 人が少なくて負担が大きい・・・ (59%)
- 肉体的な負担が大きい(腰が痛い、傷が付くなど)・・・ (43%)
- 利用者さんとの関係(コミュニケーションが難しいなど)・・・ (33%)
- 上司との関係(厳しい・無理な仕事が振ってくるなど)・・・ (31%)
- 同僚との関係(自分勝手な人がいるなど)・・・ (28%)
- 部下との関係(思ったより育たないなど)・・・ (27%)
上記からもわかるように、介護の現場では厳しい人手不足が続いています。
厚生労働省の調査によると、福祉施設の介護職員の月給は2014年の全国平均で21万9700円でした。全産業平均が32万円ですから、10万円以上安いことになります。
ちなみに福祉先進国と言われている北欧のデンマークでは、介護職の平均月収は46万円となっています。台湾でも25万円と日本より高給なのです。物価を考えればさらにその差は大きくなるでしょう。
この記事をお読みのあなたが介護施設関係者でしたら、この数字をどうご覧になりますか。
介護職員の求人は、こんな点がチェックされている
とは言え介護施設では慢性的な人手不足を解消するために、求人を行わなければなりません。
求職側も介護職の経験者ですから、どんな職務内容でどんな労働条件か、どんな給与かは当然知っています。
そのため、あなたの介護施設が提示している求人条件はじっくりと検討されていることを忘れないでください。求職者としてはこんなポイントをチェックしています。
求人の際、離職率が高いと判断されてしまう8つのポイント
【求人募集時】
1.職員数に対して採用人数が多すぎる
全体の職員に比べて採用予定人数の割合が多い場合は、「辞めるのを見越して採用する気だ」と思われます。新規事業の立ち上げであってもそう見られてしまいますから、なぜこの人数を採用するかを明記するといいでしょう。
2.絶えず求人募集を出している
求人誌やハローワークでよく名前を見る施設は、求人側でも覚えてしまいます。「しょっちゅう求人してるな」と思われると、「よほど定着率が低い職場なんだな」というマイナスの見方につながります。
3.周辺の事業所と比べて、給与が高すぎる
低賃金が常態化している業界ですから、給与が高ければ一見よい職場だと思われがちですが、辞めにくくするためではないか、人を多く集めるためではないかと勘ぐられます。よかれと思って高水準の給与額を提示していたとしても、逆効果となる場合もあります。
4.年間休日数が少ない
週休2日を謳っていても、年間を通じた休日数を数えてみると意外に少ないことはよくあります。平成26年度の厚労省の調査「就労条件総合調査結果の概況」では医療・福祉分野の年間平均休日数は109.2日(有給休暇を含まず)です。だいたい110日を休日数目安にして求人先を選んでいる傾向にあります。
【面接・見学の時】
5.職員間の笑顔・コミュニケーションが活発か
求職者が実際に職場へ見学に来たとき、職員が利用者さんやご家族などには明るく接していたとしても、職員間でのコミュニケーションが悪かったり笑顔がなかったりだと、「そとづらだけを取り繕っている」と見られがち。自分が働くとなった場合のシミュレーションをされてしまいます。
6.面接が短時間であっさり終わりすぎないか
採用面接でろくに質問もしないで「いつから来られるか」と訊くことをしていませんか。すぐにでも働いてほしい気持ちはわかりますが、これではその求職者の人材を見抜くこともできませんし、向こうにも「焦ってる」と見抜かれます。労働条件の提示、福利厚生の説明などを飛ばしてしまうと警戒感を強めてしまいます。
7.清潔感の無さ・汚物臭が気にならないか
施設内が乱雑だったり掃除が行き届いていなかったり、また排泄物のニオイが漂っていたりすると、慢性的な人手不足ということがわかってしまいます。命にも関わる職場ですから、常に清潔と整理整頓を心がけていてください。
8.施設長・管理者・リーダーが信頼できそうか
求職者にとって面接や見学は、自分がここで働けるかどうかを見きわめる場です。そこで施設の管理者や指導者とも面識を持つことができます。直接話さなくても、管理者・指導者が職場でどんな態度でいるのかはチェックしています。信頼に足る管理者・指導者であってください。
離職率の改善を図るにはどうしたらいいか
どんな業種でも、定着率を上げるために必要な要素は
- 正当な評価
- 透明性の高い経営
- 明確な将来性
- 仕事への誇り
──といった項目が重要です。
やりがい、働きがいがあり給与額もそれに見合っていれば、従業員のモチベーションを高い水準で保ち続けることができます。
兵庫県のある社会福祉法人では職員のキャリアアップ制度を導入し、介護技能や知識を確かめる独自の試験を実施、合格すると給与額が上がるシステムを採っています。
「ケアマイスター」という制度で、技術力や指導力の評価に応じて6段階のランクが付けられています。基本給や手当を加えれば、年収600万円に達する職員もいるそうです。
こうやって、希望の持てる職場環境に改善することでモチベーションは上がり、離職率の低下にもつなげられます。
また、介護職員の肉体的負担を改善するための「介護ロボット」の活躍も期待されています。実際にご覧になったり使ったことのある方もいらっしゃると思います。
「これなら仕事が楽になる」──そう思われたのではないでしょうか。
政府は2015年に「ロボット戦略」を発表しました。その中で介護分野にも触れていて、
- 歩行支援
- 排泄支援
- 認知症の人の見守り
- ベッドからの移し替え支援
- 入浴支援
という5つを重点分野としました。
2020年までに介護ロボットの国内市場を500億円に拡大するほか、介護事業者が腰を痛めることがないようにすると発表しています。
人手不足を解消するにはとてもよいことだと思いますし、介護職の重労働を少しでも緩和できるでしょう。
このような力仕事をロボットに任せたら、人間の職員に求められることは何でしょう。
精神のケア、的確な判断、介護知識の充実など、人的財産を充実させることです。
あなたの施設がこれから目指すところに応じて、このような資質を持った人たちを採用すべきです。もちろん上記のチェックポイント8項目を改善した上で、です。
そして、優秀な人材の目に留まり、納得して応募してもらえる求人広告の手法を知ることが大切です。
ここへ来て、従来のような求人誌や求人サイト、ハローワークには成し得なかった効果をあげられる、新たな求人広告手法が登場しています。
その手法のプロに相談することが、これからの優秀な介護職員を確保するための確実な一歩となります。
まずは以下の書籍をご覧いただき、業者に任せても成果に繋がらない実態を把握されることをオススメします。