社会問題に発展した待機児童問題
「保育園落ちた。日本死ね。」というツイートが世間を騒がせ、社会問題にまで発展したのはあなたもご記憶にあることでしょう。2016年初め頃のことでした。
保育園に子供を預けて仕事をしたいのに、預けられない。
一億総活躍社会とか言っているのに、子供を保育園に預けられなかったら、活躍したくてもできない。仕事をして税金を納めてやろうと言っているのにこれでは会社を辞めなくてはならない。
賄賂やオリンピックに多額のお金を使うのとかどうでもいいから、早く保育園作れよ。
という過激な内容のツイートでしたが、ごもっともな内容だったため、社会問題に発展しました。
保育士不足を改善しなければ、待機児童の問題は解決されない
保育園が足りなく待機児童問題が発生する背景には、保育士不足という問題があります。
もともと保育士は看護師や介護福祉士と並んで人手不足が叫ばれてきた職業で「きつい・給料安い・帰れない」という3K職場とも言われています。
保育園そのものを増やすのは、資金を確保すればできますが、そこで働く保育士が不足していれば、結局、園児の受け入れを制限せざるを得ません。
保育士の資格取得者はどのぐらいいるのか?
保育士の資格取得者は他の資格と比べても多い方です。
介護福祉士などと比べてもその数は多いと言われています。
しかしそれは、あくまでも資格取得したというだけの数であり、実際に保育士として働いている人は少ないです。
保育士資格を持っていながら働いていない、「潜在保育士」は60万人以上いると言われています。
これは介護福祉士の潜在介護士45万人を大幅に超える数です。
さらに、現役で働いている保育士は40万人と言いますから、潜在保育士の方がはるかに人数が多いのです。
潜在保育士が多い理由は、もちろん上に挙げたような「3K」が最大の原因です。
しかし実質を見てみると3Kどころではなく、さらに多くの原因が浮かび上がります。
保育士は多いのに保育士不足になる5つの原因
原因1:過酷な労働内容
保育の現場では、その労働のあまりの過酷さにみんなはじめは音を上げます。
子どもと一緒に遊び、デスクワークをこなし、また明日の保育の準備をする、を1人の保育士がすべて行っているのが現状です。
本業以外の業務負荷があまりにも多いのです。
長時間労働でプライベートを楽しむどころではありません。
原因2:あまりに安い報酬
初任給は手取りで10万円そこそこというケースも多く見られます。
2015年に現役保育士がこんなツイートを投稿しました。
あまりに安すぎる給与に世間は大きな衝撃を受けました。
公立保育所はまだましですが、このように民間だったり、無認可・認可外だったりの保育園では悲惨そのものです。
基本給の安さに加え、サービス残業の多さも原因となっています。
原因3:保護者との軋轢やストレス
保護者の言い分、保育士の言い分、それぞれの保育方針の違いがストレスを生みます。
若い保育士は、保護者から育児経験のなさを指摘され、攻撃されることもしばしば。
モンスターペアレンツなども出現し、精神的な重圧も非常に大きいものがあります。
原因4:同僚・上司とのトラブルや衝突
女性の多い職場ゆえに、それに伴う人間関係の気苦労が付いて回ります。
パワハラやイジメも報告されています。
自分の失敗を先輩や上司に指摘され、さらに攻撃され、ノイローゼや鬱になってしまう保育士も多いです。
原因5:責任の重さ、事故への不安
例えば、食物アレルギーの子どもが増えています。
命に関わるアレルギーもありますから、昼食を作る時に神経質にならざるを得ません。
保護者からアレルギーの内容を詳しく聞き、机を離して食事をさせるという手間もかかります。
栄養士や看護士を常駐させている園もありますが、その人件費が負担となって保育士の給与を圧迫しています。
いかがでしょうか……。
みんな子どもが好きだから保育士になったのに、現実を見るとそれだけではやっていけないのです。
行政はどんな対策を立てているのか?
待機児童問題を解消するため、まず言われているのが保育士の給与水準の引き上げです。
誰が見ても、まずはここから着手せねばなりません。
しかし、保育士の給料は簡単に上げられない仕組みになっています。
認可保育所でも、支給される運営費は預かる子どもの人数や年齢などによって決められています。
この単価が変わらない限り、給料は増えない仕組みなのです。
そこで政府は給与水準向上のため、補助金340億円の上乗せを決めました。
しかし1人あたりにならしてみれば、月額1万円程度に過ぎません。焼け石に水、です。
東京都の待機児童解消の補正予算案
東京都では、待機児童の解消に向け小池知事が補正予算案を発表しました。(2016年9月9日)
- 保育所整備や物件賃貸の費用補助の上乗せ
- 預かり時間が8時間を超える保育施設への補助の上乗せ
- 活用できる都有地情報の提供
- 充実活用できる民有地や空き家の確保に動く市区町村を支援
- 保育士等の宿舎借り上げ費用の補助対象を拡大
- 認可外保育所の利用者への補助拡大
というものです。
この中では、保育士の人材確保を図るため待遇改善の施策も盛り込まれています。
5番目の家賃補助もそう。
対象職員の年数制限を当面無くし、1戸あたり月82000円を補助。
新たに住宅を借り上げた場合、礼金も補助対象となります。
自治体毎に優遇措置を取る事で発生する問題
ただ、こうやって優遇措置を取る自治体が現れると、その隣接自治体で保育士不足が起こるという影響もあります。
千葉県船橋市が民間保育所の保育士給与を引き上げたら、隣の千葉市で保育士不足が深刻化した、という例があります。
これを見てもわかるように、保育士の待遇改善は単独の自治体が行うのではなく、国全体で包括的に実施する対応策が求められているわけです。
ある保育関係者は2014年に、保育士試験を通年化すべしという解決策を提案しています。
2015年に自民党が保育士試験を年2回にするという方針を明記しました。
ただ、いくら保育士の数を増やしたとしても、労働環境の改善がなされない限り、潜在保育士を増やすだけですので、国全体で根本的な原因をまず解決する事を先決していただきたいと思います。
保育士不足を解消する効果的な対策とは
政府の施策をただ待つだけでは、保育園経営者にとって死活問題です。
どこかからか、保育士を引っ張って来なければなりません。
でないと閉園に追い込まれてしまいます。
対策1:保育士養成学校でスカウト
そこで、都内の保育園では地方の保育士養成学校を回り、スカウトにいそしんでいます。
都内や近郊の学校には競合他社も手を伸ばしているので、できるだけ遠い土地の学校で人材を確保しようという魂胆です。
対策2:他の園から引き抜き
また、他の園からの引き抜きも常態化しています。
引き抜くためにはより良い条件を提示する必要があるので、長い目で見れば保育士の待遇改善にはプラスになることでしょう。
でも、引き抜かれた方はたまったものではありませんね。
対策3:労働環境の改善
また、労働環境改善は、保育現場の皆さんによる努力も欠かせません。
保育士同士のコミュニケーションを密にすることも、その一つです。
例えば1日15分、みんなで顔を合わせて話をする時間を設けることで、保育園全体の状況を共有できます。
保育士が精神的に孤立しないようにすること。
この業界を去って行かれては、保育士がさらに不足します。
辞めない環境を作る、これが現場でできる最大の方策です。
対策4:求人活動の改善
数少ない保育士にあなたの保育園を就職先として検討してもらうためには、「ここで働きたい!」と思ってもらえるような情報を伝えなければなりません。
ただ、保育士の奪い合いになっている現状では、どの園も求人活動に力を入れているため、普通のやり方では結果を出すのは、難しいです。
求人広告の代理店に言われるがままのやり方では、広告費ばかりかかってなかなか応募を獲得できないでしょう。
解決策としては、広告の専門家にアドバイスを貰いながら、最新の広告手法を全て取り入れていく事です。
特に今はネット社会です。インターネットをフルに活用した求人広告を打つ事が打開策になる可能性が高いです。
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