日本の有効求人倍率は上昇を続けています。平成28年11月は1.48と、前月の1.43から上昇。1.0を超えた平成26年度は1.11ですから、3年間で0.4ポイントの上昇となります。
この数字が示すように、各産業では人手不足がずっと続いているのですが、近年特に不足気味なのが「情報処理・通信技術者」つまりシステムエンジニア(SE)。
SEの人材不足の原因、そしてその打開策を探ってみます。
SE不足、その5つの理由とは
厚生労働省が発表している「労働市場分析レポート 第61号(平成28年1月29日)」によると、求人倍率の高い職業として「情報処理・通信技術者」が挙げられています。
これはすなわち、IT関連企業にとってシステムエンジニア(SE)の数が不足していることに他なりません。
上記レポートに記載されている平成21年度との比較では、
平成21年度 | 平成26年度 | |
求人者数 | 7,797 | 16,172 |
求職者数 | 9,442 | 4,975 |
求人倍率 | 0.83倍 | 3.25倍 |
となっています。
求人者数は2倍以上、しかし求職者数は半分近くまで減少しているのがおわかりでしょう。
これは、SEを志望するもしくはSEとして転職する人が減っているのか、今の勤務先から動きたくないSEが増えているのか、どちらかと思われます。
SEに限らずIT業界は転職が当たり前。であれば、転職したくないというよりは、もうSEはやりたくないと思ってしまっている人が増加しているのではないかと推測されます。
それはなぜか、原因を見ていきましょう。
SE不足の原因は次の3つに集約
1.エンジニアに付いて回るネガティブイメージ
長時間労働によるノイローゼから自殺に至ってしまった事件が世間を騒がせています。IT業界にも、長時間労働・過重労働のイメージが付いて回っています。
かつては時代の先端を走っているスマートでクールなイメージがありましたが、今では「新3K」とも呼ばれる業種になってしまいました。すなわち、「きつい「厳しい」「帰れない」です。
納期の短縮、コストの削減など、厳しい業務環境を突きつけられ、それらに対応するため長時間にわたる勤務を余儀なくされるケースも多々あります。
SEの悲哀な話がネットを通じて拡散され、ネガティブイメージとなってしまいました。
2.定着してしまった低賃金イメージ
長時間労働・過重労働の割りに給与額が低いことも、SE不足の大きな要因です。どの業種・職種にも言えることですが、給与額の低さイコール不人気職という図式は普通に見られることです。世間では、大手IT企業社員の高給ぶりが話題となることがあります。そのイメージで業界に入り、現実との差に絶望を感じる若手SEは多いのです。
大規模システム構築を例に取ると、2次下請け、3次下請け……という多重構造となります。下層に行くほど必要な人数が増え、単価も下がっていきます。
ごく一部の大企業に勤務する技術者とこの末端の技術者の所得格差はどうにもなるものではありません。
また、受注金額の値下げ合戦に巻き込まれ、年々その金額は下がってきました。これでは、給与を上げたくても限界があります。給与額は変わらず、仕事のハードルは高くなるという負のスパイラルに陥っています。
3.WebやIT技術の変化が速すぎる
日進月歩どころか秒速と言っても過言ではない、IT技術の進歩。この変化の速さがITエンジニアの業界離れに影響を与えています。
情報処理推進機構(IPA)が調査した「IT企業IT技術者の仕事や生活に対する考え方」の
グラフには、「今後5年程度の間に自分の仕事で求められる技術・スキルは変化すると思う」が58.8%、「将来のキャリアに対して強い不安を感じている」が48.9%という結果になっています。
やっと最新の技術を習得したと思ったら、既に次の技術が誕生しており、またそれに対する勉強をしなければならない……。
スキルの習熟が変化のスピードに追いついていかないのです。
また、Web業界やIT市場そのものが拡大し続け、事業分野が広大となりすぎている状況にあります。IoTやWebアプリのサービスが増大しているのは実感なさっていることでしょう。
これら業界や市場の拡大が、IT技術者が不足している要因の一つです。
SE不足はIT関連企業にとって死活問題!?
「2020年問題」という言葉があります。
この年に開催される東京オリンピックに伴い、様々な場所で関連システムの開発が行われています。また、マイナンバー制度の導入による大きな開発案件が全国的に必要となってきました。大手都市銀行のシステム更新も予定されており、こちらにも数多くのSEが必要とされています。
こういった要因が2020年に向けて一気に進行しています。
それらの案件に大きな影を落とすのが、現在のSE不足という現状です。
そして、2021年以降もこのような需要があるとは保証されていません。一気に開発案件数が減ってしまうという予想もあります。従って、企業もただSEを増やせばよいというわけにはいかないのです。
開発案件が多いのにもかかわらずSEが不足したままだと、プロジェクト自体の遅れが頻発し、労働環境はさらに悪化していきます。
また、開発の委託先を海外に求めるケースも増加していくので、オフショア開発(海外での開発)がさらに加速してしまいます。IT技術者の空洞化が現実のものになってしまうのです。
ではどうやってSE不足を解消したらいいのか
どんな業界にも同じことが言えますが、待遇改善が優秀なSEを集めるための要件となります。
しかし、それだけでは完全とは言えませんし、高給であっても業務環境がブラックなら定着率の高さは望めません。
先述のように、オフショア開発を選択するのも方策のひとつです。東南アジアの会社を利用するケースが多く見られます。開発コストを抑えられるので、本社に迎え入れるSEの待遇が改善されるというメリットも発生します。
パッケージ製品の導入を視野に入れることもお勧めです。システムをゼロから開発するのが従来の日本式やり方でしたが、これでは必要とされる人員は旧来のままです。パッケージ製品であれば、それが不要となります。
SEにかける人件費が増やせないのであれば、このような方法でコストを抑制する方策が有効です。抑えたコストとの差額で、少数のSEを採用することをお勧めします。
そして、採用するSEはとびきり優秀な方を。
1人で複数人の働きをしてくれるスキルを持ったSEがいるだけで、生産性は大きく高まります。
そういった人材は従来大手企業に偏っていました。しかし、働き方が多様化している現代、企業の外に出て自らの力を試したいと思う人は増えています。
優秀なSEを採用するためには、まずはあなたの企業の求人広告を見てもらわなければなりません。
そのためには、求人広告の手法も再考する必要があります。
いくら好待遇を謳っても、彼らの目に留まらなければ何の価値もありません。広告費をドブに捨てるのと同じです。
質の高い人材にどうやったらあなたの企業を知らしめるか──その発信方法の改革も急務課題です。
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