人手不足に苦しむ業界とは?雇用の現状と7つの解決手段

シャッター街

有効求人倍率が上がり、労働力はますます売り手市場となっていて求人の応募を獲得するのが難しくなっています。

あなたの企業も、きっとそれを実感しているに違いありません。

ただ一言に人手不足と言っても、業界によってその度合いや事情は違います。

業界別に見た人手不足の弊害を紹介します。

運送業界

運送業界2006年をピークにドライバーの数は下降線をたどり、ドライバー不足は慢性化

高齢化も進行しています。

宅配便を待っている時チャイムが鳴ったのでドアを開けたらおじいさんが立っていた。

驚いて思わず「どちらさまですか」と訊いたら宅配便ドライバーだったという話もあります。

人手不足の理由は、低賃金と仕事のきつさです。

また、ドライバー不足はコンビニに商品切れを起こすおそれもあります。

このままではAmazonのような翌日お届けも不可能になってしまいますし、ロジスティクスが破綻すると製造業にも悪影響が及びます。

飲食業界

飲食業界好条件の求人を出しても人が集まりにくく定着しにくい業界です。

その理由はいくつかあります。

例え「未経験OK」とあっても、求められるスキルは意外に高いもの。

お客さまへ出す速さを求められ、ストレスがかかります。

慣れるまでの「研修期間」「試用期間」も長く、その間時給は低く抑えられます。

IT業界

IT業界「きつい」「帰れない」「気が休まらない」という「ニュー3K」が叫ばれています。

長時間労働に耐えられず辞めてしまう社員が増えている業界です。

その背景には、需要に人手が追いついていない状況があります。

2010年東京オリンピックに向けてさまざまなインフラ整備が急ピッチで進められていますが、それに対応するITエンジニアの数が絶対的に足りません

また、人口のパイの大きい団塊ジュニアが35歳を超え、「エンジニア35歳定年説」を過ぎていることも人手不足の原因と言われています。

建設業界

建設業界バブル崩壊の影響で労働者離れを起こし職人も減少。

2001年に誕生した小泉政権では、公共事業を縮小しました。

その結果、建設業の労働者が減少し続けました。

そこに起きたのが東日本大震災。

復興需要に応えるため少なくなった建設労働者が集まりました。

さらに、安倍政権で経済対策として公共工事を増やし、加えて東京オリンピック関連のインフラ整備でも労働力が求められています。

しかしそれ以外の現場ではさらに人手が足りなくなり、受注したものの工事に着工できない状況もよく見聞きします。

ここには全部挙げられませんでしたが、他の業界にしても人手不足とその弊害は多かれ少なかれ問題となっています。

人手不足解消に成功した5つの事例

人手不足は、不況になって働き先が減ると解消します。これは真実なのですが、企業の元気も消滅してしまうことになります。

今の業績を維持もしくは伸ばしつつ、人手不足を解消する方法はないのでしょうか。

人手不足解消に向けて実際に行われたいくつかの取組例を紹介します。

事例1:コストコ──全国一律でアルバイトの時給を1,200円に

コストコアメリカ発祥で倉庫のようなどでかい売り場で知られる会員制量販店・コストコ。

日本では25店舗を展開しています(2016年6月現在)。

このコストコがアルバイトの時給を全国一律1,200円からと発表しました。

1,000時間ごとに昇給し最高では1,800円にもなると言います。

地方によっては最低賃金をはるかに超える時給となり、全国に衝撃が走りました。

新規出店計画地域の説明会には人が殺到しているそうです。

コストコは正社員率も50%と高いので、地元の雇用創出に役立つと自治体も歓迎しています。

この賃金水準は首都圏の相場に合わせていて、進出している他の国でも同様の施策だとのこと。

グローバル・スタンダードに基づいているわけですね。

事例2:イケア・ジャパン──アルバイトと社員の待遇を同等に

イケア日本の大企業としては初めて全ての従業員に同一労働・同一賃金を適用した会社です。(もっとも親会社はスウェーデンですが)

イケアとしては、人件費は人の成長にかけるお金という捉え方のようです。

つまり、新しい店を建てるのと同じように、コストではなく投資だと考えています。

これも「黒船」ではないでしょうか。

日本の会社ではどうしても学歴や社歴で給与体系を決めてしまいます。キャリアとノンキャリア、という分類です。

この人事制度がある限り、同一労働・同一賃金の導入は難しいかもしれません。

しかし、「店員が以前より明るくなり、サービスが増えた」「格差がなくなると人間はイキイキ仕事ができるんだな」という声もネットでは聞かれます。

事例3:ワタミ──転勤を伴わないエリア限定社員導入

ビールかつて「ブラック企業」の代名詞のように報道され、雇用環境が問題視されてきた会社ですが、労働環境改善に向けて「エリア限定社員」という制度を本格導入しました。

これは、エリア内の店舗に勤務し転勤を伴わない制度で、福利厚生を正社員並みに引き上げ、賞与も年1〜2回支給されます。さらに、店長にまで昇格できる道を拓きました。

実は今までもエリア限定社員制度はあったのですが、昇格しても副店長止まりなどと、ここまでの好待遇ではありませんでした。

今回の導入で待遇改善を図り、安定的な働き手を増やしたい狙いです。

アルバイトを対象に年間約100人登用する計画です。

事例4:スターバックスコーヒー ジャパン──契約社員をすべて正社員に

スターバックス約800人の契約社員、そのほぼ全てを正社員にするという発表をして話題になりました。

出店を拡大する上で、店長を任せられる人税育成が課題で、即戦力となる契約社員を取り込むことにしたのだそうです。

待遇改善になり、モチベーションアップにも繋がります。

この制度導入以降は時給制から月給制になり、賞与も支給されるようになります。

事例5:日本KFC──出勤日時を自由選択

ケンタッキーケンタッキー・フライド・チキンの日本KFCでは、好きな曜日を休日にできる制度を導入します。

出勤日数や1日あたりの勤務時間を自由に決められる仕組みで、週の労働時間を20時間程度に抑えられます。介護や育児など、家庭の事情を抱える人も正社員として入社しやすくし人材確保を図る目的です。

同じ労働時間の場合、アルバイトよりも年収は70万円ほど増える試算とのこと。

対象となるのは「出勤日時限定社員」を選択した社員。

正社員の区分けは他に「ナショナル社員」「地域限定社員」「店舗限定社員」があるそうです。

その他、待遇改善を打ち出している企業はたくさんあります。

あなたの会社で人手不足に打つことのできる「7つの手段」とは?

ご紹介したのは大企業ですが、中小企業でも求人で打ち出すことができる改善策はあるはずです。あなたの会社でも人材不足解消のためにできる7つの手段をお伝えします。

手段1:賃金と労働条件のアップ

何と言っても、これに勝る改善策はありません。

そんなに人件費が割けないというのはよくわかります。しかし、人件費に回す原資を確保するため他経費を見直すのは大切です。

経営の効率化を進める上でも効果があります。

手段2:入社後のキャリアプランを明示する

たとえアルバイト/パートであっても、働き始めて何ヶ月後にどんな仕事をしてどんな位置にいるのだろうということは気になります。

正社員ならなおさらのこと、将来のキャリアプランを知るのは重要です。

大まかでもいいですから、何ヶ月後に仕事はこう/給料はいくら、というガイダンスを明示します。

手段3:育児中の女性も対象に含める

妊娠・出産をきっかけにして退職、子どもは生まれたけれどまだ手がかかる、

でも、働きたいし働かなければならない事情もある──そんな女性はとても多いのです。

受け入れる側としてはそれなりの環境改善を施さなければなりませんし、既に働いている従業員の理解促進も必要でしょう。

しかし長い目で見て、きっと意義を持ってくる施策であることは間違いありません。

手段4:高齢者の力と経験を

「シルバー人材センター」を代表格とする高齢者の就職斡旋機関があります。

今までに蓄えた経験や技能を活かすために働き先を紹介するところです。

老け込むには早く、働く意欲のある高齢者はたくさんいます。何と言っても団塊の世代ですから。

経験豊富な人々を適材適所の仕事で活かすことは、やはり社会的な意義もあります。

団塊の世代は現役時代会社でITの一端に触れている方も多いので、従来型の求人に加えてネットでの募集も試みる価値はあります。

手段5:技能を持った外国人の雇用

飲食店や製造現場での外国人雇用は当たり前になりました。

それほど技術を持たずともOJTでスキルを伸ばしていける職種です。

そうではなく、本国で専門教育を受け、高い技能を持った外国人の求職者もたくさん来日しています。

そういった人たちにも門戸を開き、日本人と同待遇で迎え入れることで人手不足は解消するどころか、業績の向上も見込めるでしょう。

もちろん言葉や習慣の違いなどを考慮する必要はありますが、国際的な職場という評価も獲得できます。

手段6:ロボット導入

飛び道具のような解決策ですが、人間が集まらなかったら機械に仕事を任せるという選択肢もあります。

プログラムによって決められた作業をする産業用ロボットから、「ペッパーくん」のように人工知能を備えた人型ロボットまでいろいろあります。

設備投資はかかりますが、これは案外現実的かもしれません。

手段7:適材適所の求人広告を出稿する

求人をする際、あまり効果の見込めない手段を使っていませんか。

本当にほしい人材の目に触れなければおカネをドブに捨てていることになります。

あなたの会社が求めている人材が探しやすく、広告費を効率よく使うことができ、競合他社に先駆けることのできる手段は確実にあります。

でもどのような方法を採れば人を集められるか、よくわからない──そんな場合は、以下で紹介している書籍をご覧になって、まずは成果に繋がらない求人方法を把握していただければと思います。