働き方改革で中小零細企業の人手不足はより深刻化する

働き方改革による人手不足

働き方改革は労働力を高めるために政府が取り組んでいる事ですが、働き方改革によって中小零細企業の人手不足はより深刻になると予測されています。

「これでは、本来の目的を果たしていないのではないか?」と思われるかもしれませんが、人手不足が深刻になるのは一部の中小零細企業に限った話です。

ちゃんと働きやすい環境を整備している企業は当てはまりません。

慢性的に人手不足の状態で、残業するのが当たり前、休日出勤も当たり前といった中小零細企業が該当する形になります。

それでは、なぜ、中小零細企業は、働き方改革によって人手不足が深刻になるのか?その理由をお伝えしていきます。

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そもそも働き方改革とは?

働き方改革は、一言で言えば「一億総活躍社会を実現するための改革」になります。

少子高齢化が進んだとしても50年後も人口1億人を維持し、誰しもが活躍できる社会にしましょう!という事ですね。

でも、どうして誰もが活躍できる社会にしなければいけないのか?というとその理由がかなり深刻です。

このままでは、労働力人口があり得ない程減少することが分かっているから

日本の将来推計人口

※引用:内閣府「人口・経済・地域社会の将来像」

上記のグラフをご覧いただいてわかるように、今後の日本は人口減少することが明らかになっています。

1995年に8000万人を超えた労働力人口は2060年には4418万人になる見込みです。

つまり、このまま何もせず放って置けば、40年後には約半分の労働力しかなくなってしまうという事。

国の生産性は落ちる一方で貧乏な国になっていきます。実際、現状でも低金利は当たり前になってますし、年金のスタートが遅くなるのも周知の事実です。影響は徐々に現れています。

つまり、日本が貧乏になる最大の原因は人口減少による労働力の低下です。

世界2位の経済大国日本を維持するためには、あらゆる方法を使って労働力を高めなければいけない。そのためには、働き方改革が必要だという事です。

労働基準法を70年ぶりに変更し、抜本的な改革を行う

働き方改革によって、労働力を高めるために考えられている対策はこちらです。

  • 女性や高齢者などの働き手を増やす
  • 出生率をあげて将来の働き手を増やす
  • 労働生産力を上げる

このような対策が考えられていますが、どれもこれも言うは易し行うは難しですよね。

将来の国を想ってこれらの対策に自発的に取り組む会社もあるとは思いますが、そういった会社はごく一部です。ほとんどの中小零細企業は自分たちが生き抜くのに精一杯

そのため、政府が取り組んだのが労働基準法の改正です。実に70年ぶりとなる大改革となります。

抜け道があった労働基準法を変更し、新しい法を破った事業者には罰則を与える事で、強制的に働き方を変えていくという手段をとっています。

労働基準法の改正による大きなポイントは2点

何が変わったかと言うと、色々ありますが、大きなポイントは2点です。

  1. 有給休暇の義務化
  2. 残業規制

どちらの法改正も効率の良い労働環境を整えるためには、必要な改正なので、ホワイトな会社であればまったく問題ありません。

ただ、日本で働いている人たちは仕事が命で、長時間労働が素晴らしいことだと考えている人も多いです。

残業が当たり前の会社も多いですし、酷い会社であれば過酷な労働環境とハラスメントによって過労死に至る従業員が出てしまうケースもあります。

いわゆるブラックと言われる会社の場合は、この法改正によって大きな変化が生じることは間違いないでしょう。

では、どんな変化が生じるのかを具体的に解説していきます。

5日間の有給休暇付与義務は2019年4月にスタート!

2019年4月から5日間の有給休暇の付与義務がスタートしています。

日本の中小企業では、有給休暇制度自体が採用されていないとか、有給休暇の付与日数の約5割前後の日数しか消化されていないのが実態です。

ただでさえ、中小零細企業は人手不足が激しいので、有給休暇5日間の導入はなかなか厳しいものがあるでしょう。

また、正社員のうち16%が有給休暇を1日も取得していないと言われています。

有給休暇をとっても事業が成り立つ会社であれば、問題ないですが、休まずに働いてもらうことで経営が成り立っている会社にとっては、厳しくなります。

有給休暇の義務化によって売上が減少し、給料を下げざるを得なくなる会社も出てくるかもしれません。

残業規制は2020年4月にスタート!

中小企業の残業規制は、2020年4月から適用されますので、秒読みの段階に入っています。

何が変わるのかと言うと、これまでは、時間外労使協定を超えて働かせても、残業代をしっかり払っていれば問題ありませんでした。

でも、改正後は、限度時間を超えて働かせると罰則の対象となります。社長が労働基準法違反で逮捕されることも生じてしまうわけです。

具体的には、月100時間以上、年間720時間以上、残業させることができなくなります。

日常的に残業が1日1時間ほどの会社であれば問題ありません。でも、1日平均3時間を超えるような会社では対策が必要になってきます。

最大の難点は残業規制によって、従業員の収入が減ってしまうところ

今までは、タイトなスケジュールの仕事が入ってきても、従業員に無理をいって残業を多くしてもらうことでやり遂げていた仕事も、今後は月100時間以上、年720時間以上働いていたら、もう残業させる事ができなくなります。

残業することが当たり前になっている会社の場合、気をつけていただきたいのが従業員の離職です。

以下の残業代のシミュレーションをご覧ください。

1日8時間労働、月間20日勤務 手当込み月額30万円のケース
1日平均残業時間 月間残業時間 月間残業代
1時間 20時間 46,875円
2時間 40時間 93,750円
3時間 60時間 140,625円

超人手不足時代がやってきた!小さな会社の働き方改革・どうすればいいのか」から引用

これまで1日3時間ほど残業をしていた方が、毎日1時間ほどの残業になると、残業代が約10万円ほど少なくなり、毎日2時間ほどの残業の場合は、5万円少なくなるという計算になります。

働き方改革によって、中小零細企業の従業員は辞める可能性が高まる

有給休暇の義務化にしても、残業規制にしてもどちらも破ったら、労働基準法違反となり、事業者に対し6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。ですから、これからは無茶な働き方を強要する会社は減っていくと思います。

ただ、従業員にとって気になるところは、働き方改革にとってどんな変化が生じるかというところですよね。

有給休暇がもらえるのは嬉しいと感じる人が多いとは思いますが、収入が落ちるのは誰しも避けたいところ。

今までもらっていた給料より残業が少なくなる事で、月5〜10万円も少なくなったらどうでしょうか?

奥さんから言われる言葉はだいたい予想がつきます。

「こんなに収入がダウンすると生活が厳しい。もっといい給料の会社に転職してくれない?」などと言われるのではないでしょうか?

もっと福利厚生がよくて条件の良い会社に転職する事を考えるようになってしまう。

残業によってなんとか帳尻を合わせていた中小零細企業にとっては、働き方改革は従業員が会社を辞めるきっかけとなる可能性が高まる危険性を備えているということです。

人手不足時代を生き残っていくには?

現状でも人手不足が激しいのに、働き方改革によって、より人手不足が深刻になるといった状況を中小零細企業はどのように回避していけば良いのか?

対策としては、条件面では戦わないという手段をとるしかありません

給料とか休み以外の魅力で求職者を引きつけない限り、今後の激しい人材の奪い合いから生き残ることは難しいと言えるでしょう。

実際、どのような対策をとって結果を出しているのか?僕のクライアントさんの例をご紹介します。

クライアントの事例紹介

「日本一働きやすい会社」を目指す人材派遣会社の例

携帯ショップに人材派遣している人材派遣会社の場合は、全国から住み込みで人を集めているのですが、その会社には「日本一働きやすい会社を目指す」というスローガンがあります。

給料面ではもっと多くの収入が得られる住み込み系の求人はたくさんあるのですが、働きやすさという点で攻めている会社はほとんどありません。

また、携帯ショップなので、20〜30代の若い人が検討する傾向がありますし、そういった若い方は、収入の多さよりもプライベートの時間を大切にするワークライフバランスを重視している傾向が強いです。

会社の方向性と求職者が求めていることがマッチしていて、競合他社とかぶらないので、応募を安定的に獲得する事に成功しています。


このように、ただ求人広告を出すのではなく、社内でしっかりと勝てる戦略を練って戦っていかないと人手不足の時代を生き残っていくことは難しいでしょう。

求人で勝てる戦略を練るには業者に頼らず、社内で検討すべき

では、どうすれば熾烈な人材の奪い合いに勝てるようになる戦略を立てられるのか?

求人のプロは求人広告会社だと思う方が多いとは思いますが、大半の求人広告会社はただ媒体を販売するだけで、成果にフォーカスした取り組み方を教えてくれることはありません。

クライアントの立場に立って的確なプランを提案されることはまずないと思って良いと思います。

ですから、業者に頼らず、ご自身で成果に繋げる知識を学んでいく必要があります。

そのために、書籍も書いていますので、この機会に是非、ご覧になってみてください。