人手不足が続く中、これによって倒産してしまう「人手不足倒産」の件数が増えています。
必要な人材を確保できないことで経営が行き詰まり、倒産に至ってしまうのです。
これらの根本原因は何か、どんな対策が考えられるかをひもといていきましょう。
人手不足倒産が起きる原因とは?
調査会社の東京商工リサーチが2016年の12月に発表した、11月の全国企業倒産件数(負債額1000万円以上)によれば、前年同月に比べると倒産件数は2.5%減って693件でした。
11月としては26年ぶりの低水準です。
しかし、業界別によく見ていくと、運送業、介護、飲食業などで倒産件数が若干増加していることがわかります。これらの原因は、企業の「人手不足」に起因するものという分析がなされています。
でもなぜ、人手不足によって、倒産してしまうのでしょうか。
通常は業績低下によって運用資金が回らなくなり事業継続が困難になった場合に倒産が起こります。それに対し、仕事はあるのに、その仕事を遂行してくれる人材がいないため、事業継続が困難になるのが人手不足倒産です。
仕事はあるのですから、人を集めることができれば、事業は継続できるのです。でも、肝心の人を集めることができないところが大きな原因となっています。
特にブラックな印象が強い業界は厳しいです。いくら広告を出しても応募が1件も来ないなんて話はザラにありますし、やっと採用できたと思ってもすぐに辞めてしまって、全く定着しないのです。
募集をかけても応募が集まらない。せっかく採用したとしても定着しない。条件を良くすれば状況は改善するかもしれませんが、人件費を上げてしまうと利益が残らなくなるため上げられない。
だから、どうしようもなくなり、倒産という道を選んでしまっているわけです。
人手不足倒産が多く見られる3つの業界
運送業
ネットショッピングの拡大や、東京オリンピックを見据えて首都圏の開発案件が増加しているため、ドライバーの数が足りなくなっています。
しかし観光バスやツアーバスの事故を見ればおわかりのように、ドライバーは過重労働の職業であるというイメージが定着。敬遠される職種になってしまいました。
ドライバーの労働環境に関する法令順守徹底を求められるようになったことも、中小企業にとっては重荷になっています。
介護
慢性的に人手が足りない業種の一つが介護業です。
こちらも3Kなどと言われる過重労働のイメージが強いため、人が離れやすく集まりにくい状態が続いています。
超高齢化社会を迎え、介護職員の需要は高いはずなのに、職員を確保できず倒産に至る中小の施設が増加しています。
飲食
こちらも過重労働や長時間労働というイメージを払拭できない業界です。
サービス業ですから企業としては顧客満足度を高めなければなりません。そのためアルバイトといえども高いレベルのサービスを求められます。
賃金がそれに見合っていないと感じられると人材は離れていってしまいます。また、賃金を上げたとしても責任を求められるため、他の楽な業種に流れてしまうケースも多々見られます。
人手不足倒産を避ける3つの方法
人材を集めるために最初に思いつくのは、賃上げではないでしょうか?給料を上げて、待遇を良くすれば人は集まって来る。
これも一理あるとは思います。ただ、言うは易しで、それを実行するのは非常に難しいですよね。
生産性が高く、かかるコストに対して大きな収益を上げている会社であれば、問題ないと思います。でも、コストを上げると収益がなくなる会社であれば、どうすることもできません。
では他に人手不足倒産を避けるためにどんな方法があるのかを探っていきたいと思います。
1.ビジョンを持つ
生産性が低い状態のままですと、待遇面でメリットを伝えることはできません。
条件の良し悪しで判断されたら、求職者に選ばれることはないのですから、別な面で魅力を伝えていかなければなりません。
そのために、最も有効な方法が会社のトップである社長が持つビジョンを伝えることです。
最終的に会社をどうしていきたいのか?今後、どのような展望を持っているのか?
そのビジョンが魅力的であればあるほど、待遇がそこまで良くなくても優秀な求職者を惹きつけることは可能です。
例えば、NPO法人やボランティアに優秀な人材が集まるのもこの原理が影響しています。「世の中のためにこのような貢献をしたい!」という強い使命感を持っているとその思いに共感して人は集まってくるわけです。
心の底から本音で言っているという確信を求職者に感じ取ってもらえなければいけませんが、強い思いを抱いているのであれば、ぜひ、その思いを発信し続けていただくことをオススメいたします。
2.人間関係を良好にする研修を行う
採用した人材がすぐに辞めていってしまうのは、ミスマッチ雇用が原因のケースもありますが、人間関係が悪くなって辞めてしまうケースも非常に多いです。
会社を辞める理由の上位には必ず人間関係の悪化が入っています。退職理由ランキングTOP10「建前と本音」に詳しく書いてますので、ぜひご確認ください。
人間関係の悪化を防ぐには、コミュニケーション能力を高める研修を行うのが効果的です。
仕事を行う上でコミュニケーションは必要不可欠です。技術を高める勉強も必要ですが、社内で気持ちよく仕事を続けていくためにも、顧客との関係を良好に保つためにもコミュニケーション能力を高める勉強はとても重要です。
また、どんな学びでも一緒ですが、しっかりとした能力を身につけてもらうには、継続して勉強に取り組むことです。一回研修を受けただけで人は変われません。ましてや、会社から命令されてイヤイヤながら受ける研修なんてなおさらです。
ですから、継続的に楽しく学べる環境を整える必要があります。
弊社のクライアント様の中には、このような研修を行う環境を整え、3年以内の離職率が業界平均70%~80%のところ、10%に抑えることに成功している会社もあります。
せっかく人材を採用したとしても、辞めてしまったらそれまでかけてきたコストも時間も無駄になってしまいます。コストをかけずに定着率を高める方法があるのであれば、そこには、手間を惜しまずに取り組むべきかと思います。
3.求人活動に力を入れる
求人に関しては、いろいろな方法がありますが、応募が集まらないと困っている会社は大抵、求人広告代理店の言われるがまま求人媒体に広告を出しているケースが多いです。
今の時代、求人媒体を利用しても応募はほとんど得られないのです。しかも、求人媒体を利用して応募が来ない状況が続くというのは、毎回お金を無駄にし続けているのと一緒です。
これでは、全く意味のない活動ですので、まずは、求人広告市場の現状をしっかり把握しておいてください。求人に応募が来ない・集まらない3つの理由とは?
広告費を1円も無駄にしないで効果的に求人の募集ができる方法はありますので、本当に人手不足の問題をなんとかしたい!と思われているのであれば、その方法に取り組んでいくべきです。
そして、上記でお伝えしているお金がかからずにできる対策に真剣に取り組んでいれば、求人募集時に発信するメッセージは確実に求職者の心に響くようになります。
いくら人が集まりづらい業界といえども、その業界で仕事を探している人がゼロなわけではありません。可能性がゼロでなければ、できることは全て取り組んで頑張っていれば道は開けてくるはずです!頑張りましょう!